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ヤンニョムチキンのような「中毒性」を会社に。誰も辞めない組織の“秘伝タレ”とは?

この記事の目次

なぜ、私たちはあの「甘辛さ」を求めてしまうのか

無性にヤンニョムチキンが食べたくなる夜があります。
カリッと揚がったチキンに絡みつく、コチュジャンの刺激的な辛さと、とろけるような甘さ。
この辛さと甘さの絶妙なバランスのあの中毒性は、他の料理には代えがたい魅力があります。

普段は健康のために揚げ物をなるべく控えたりしていますが、ヤンニョムチキンの前では無力です。
一口食べれば、「ああ、これだ」という幸福感に包まれます。

ある週末、夢中でチキンを頬張りながら、ふと思いました。
「会社組織も、このヤンニョムチキンのようになれないだろうか?」

一度味わったら、他の会社(味)では物足りなくなる。
辛い(大変な)こともあるけれど、その奥にある甘み(やりがい)を知っているから、やめられない。
そんな「中毒性」のある組織を作ることができれば「離職率」の問題も、霧が晴れるように解決するのではないか。

「採用担当が何を言っているんだ」と思われるかもしれません。
しかし、これは単なる食いしん坊の妄想ではありません。
多くの企業が陥っている「離職の罠」と、そこから脱却するための「エンゲージメント(愛着)」の正体が、この赤いタレの中に隠されているのです。

この記事では、誰もが知るあの味をメタファー(比喩)に、社員が「ここで働き続けたい」と心から思える組織、すなわち「誰も辞めない組織」を作るための“秘伝タレ”のレシピを公開します。

1.あなたの会社は「ただのフライドチキン」になっていないか?
〜「給与・条件」という名の衣だけでは、勝てない時代〜

まず、ヤンニョムチキンの構造を分解してみましょう。
大きく分けて、「フライドチキン(土台)」と「ヤンニョムソース(味付け)」の2つで構成されています。

これを企業組織に置き換えてみます。

フライドチキン(土台)=「衛生要因」 給与、オフィス立地、福利厚生、パソコンのスペック、残業時間などの「労働条件」
ヤンニョムソース(味付け)=「動機付け要因」 企業のビジョン、カルチャー、人間関係、仕事のやりがい、称賛される風土などの「情緒的価値」。
多くの企業、そしてかつての私もそうでしたが、採用活動や離職防止施策において、一生懸命「フライドチキン」を美味しくしようと努力します。
「競合他社より給与を1万円高くしよう」 「オフィスの椅子を高級なものに変えよう」 「年間休日を増やそう」

もちろん、これらは大切です。
べちゃっとした、まずいチキン(劣悪な労働環境)では、どんなに美味しいタレをかけても誰も食べません。
土台としてのフライドチキンは、カラッと揚がっている(一定以上の水準である)必要があります。

しかし、ここには落とし穴があります。
「フライドチキン(条件)」だけで勝負している限り、社員は必ず「もっと美味しいフライドチキン」を求めて去っていくということです。
「A社の方が給料が5万高いらしい」 「B社の方が家から近いらしい」
条件で惹きつけた人材は、条件で去っていきます。
なぜなら、フライドチキン自体はどこでも食べられるコモディティ(代替可能品)だからです。
私が目指したいのは、「給料が少し高いから居る」というドライな関係ではなく、「この会社の雰囲気が好きだから、他には行きたくない」というウェットな愛着です。
そこで重要になるのが、独自の「秘伝のタレ(カルチャー)」なのです。

2.中毒性を生む「甘さと辛さ」の黄金比
〜「楽な職場」ではなく「熱狂できる職場」を作る〜

では、社員を虜にする「秘伝のタレ」とは何でしょうか?
ヤンニョムチキンの美味しさの秘訣は、「辛さ(Spicy)」と「甘さ(Sweet)」の絶妙なバランスにあります。

これを組織論に翻訳すると、こうなります。
辛さ(Spicy)= 困難な課題、高い目標、プロとしての厳しさ、変化の激しさ
甘さ(Sweet)= 達成感、心理的安全性、仲間との絆、承認、成長実感

ここで重要なのは、「辛さ」も必要な要素だということです。
離職率を下げようとすると、私たちはつい「甘さ」ばかりを強めがちです。
「ノルマをなくそう」「叱るのをやめよう」「とにかく優しくしよう」。
しかし、ただ甘いだけのタレ(ぬるま湯の組織)は、最初は良くてもすぐに飽きられます。
「ここでは成長できない」「張り合いがない」と感じ、優秀な人材ほど去ってしまいます。

中毒性とは「辛い!でも美味い!もう一個!」というサイクルです。

「今のプロジェクト、納期も厳しいし、クライアントの要望も難題だらけだ(辛さ)。でも、チーム全員で知恵を出し合って、なんとか乗り越えた時のあの達成感と、打ち上げのビールの味は最高だ(甘さ)。だから、また次のプロジェクトも頑張りたくなる」

この「辛さと甘さのコントラスト」こそが、エンゲージメントの正体です。
採用担当の方が求職者に伝えるべきは「うちは残業もなくて楽ですよ(甘み100%)」という嘘ではなく、
「うちはこんなに難しい山に登ろうとしている。だから筋肉痛にもなる(辛み)。でも、山頂からの景色は絶景だし、一緒に登る仲間は最高だよ(甘み)」という「リアルな味」なのです。

3.「一緒に作り上げていきたい」という隠し味
〜食べる人(社員)を、作る人(シェフ)に変える魔法〜

さて、ここからが本題です。
どうすれば、その魅力的なタレを作れるのでしょうか?
そして、どうすれば社員をそのタレの虜にできるのでしょうか?

最も重要な「隠し味」は「一緒に作り上げていく(プロセスへの参加)」です。

世界で一番美味しい料理とは何でしょうか?
高級レストランのフルコースでしょうか?
実は「キャンプ場で、仲間と一緒に苦労して火をおこし、自分たちで作ったカレー」ではないでしょうか。

人は、「自分が作るプロセスに関わったもの」に対して、強烈な愛着と当事者意識を持ちます。
これを心理学では「IKEA効果」などと呼ぶこともありますが(スウェーデンの家具メーカー「IKEA(イケア)」が提供する「組み立て式の家具」に由来し、労力をかけた分だけ満足感や所有感が高まるため、製品への評価が上がるという認知バイアス(思考の偏り)の一種)、
組織づくりにおいても全く同じことが言えます。

経営陣や人事だけが密室で作った「完璧な制度」や「綺麗な理念」を与えられても、社員はあくまで「お客様(食べる人)」のままです。
味が気に入らなければ、文句を言って店を出て行きます。

しかし、「タレ作り」に社員を巻き込んだらどうでしょうか?
「今の会社の評価制度、ここがイケてないと思うんだ。どうすれば良くなるか、みんなでアイデアを出し合わないか?」
「新しいオフィスのレイアウト、若手メンバー中心で決めてみてくれないか?」
こうして、「自分たちが意見を出して作った制度」「自分たちが企画したイベント」には、愛着が湧きます。
「自分たちの会社だ」という認識が生まれます。
社員を「お客様」から、一緒に店を切り盛りする「シェフ(パートナー)」に変えること。
これこそが、誰も辞めない組織を作るための最大の秘訣です。
完成品をポンと渡すのではなく、未完成のものを一緒にこねて作り上げていく泥臭い時間。
その共有体験こそが、組織という料理のコクを深めるのです。

4.社内イベントは「飲み会」ではなく「共同調理」
〜エンゲージメントを高める具体的なレシピ〜

では、具体的にどのような「共有体験(タレ作り)」の場を作ればよいのでしょうか。
単なる「飲み会」や「社員旅行」では、昭和のノリについていけない社員も出てきます。
現代的な、そして「ヤンニョムチキン的」なアプローチが必要です。
そこで提案したいのは、「課題解決そのものをイベント化する」という手法です。
例えば、私が以前いたチームでは、「業務改善ハッカソン」というイベントを行いました。
これは、日々の業務における「辛いこと(非効率な業務、理不尽なルール)」を洗い出し、チーム対抗で「どうすればそれを楽しく解決できるか」を競い合うものです。

辛さの共有: 「この入力作業、マジで無駄だよね」「わかるー!」という共感(不満のガス抜き)。
甘さの創出: 「AIを使って自動化してみた」「ルール自体を廃止した」という解決策の実行
最高のフィニッシュ: 改善によって生まれた時間で、みんなで美味しいものを食べに行く

これはまさに、辛さを旨味に変えるプロセスです。
ただ不満を言うだけでなく、自分たちで解決したという成功体験。
これが「中毒性」を生みます。

また、「失敗共有会(しくじり先生)」も効果的です。
誰かのミスを責めるのではなく、「あんなに辛いミスをしたけれど、そこから何を学んだか」をオープンに語り、みんなで称賛する
「辛さ」を笑いと学びに変える文化がある会社は、心理的安全性が高く、居心地が良いものです。

広報担当の方は、こうした社内の「タレ作り」の様子を、そのまま外部に発信することも重要です。
「当社は完璧な会社です」ではなく、「当社は今、みんなでこんな課題と戦っています。こんな風にタレを改良中です」と発信する。
すると、その「プロセス」に共感し、「私も一緒にそのタレを作りたい!」という、価値観の合った人材が集まってくるようになります。

5.採用担当が仕掛ける、冷めにくい「じっくり煮込んだタレ」

 「中毒性のある組織」とか「熱狂」とか言うと、人によっては、少しハードルが高く感じるかもしれません。
体育会系で、毎日ウェイウェイ盛り上がっている会社を想像してしまう方もいるでしょう。

しかし、目指すところの「ヤンニョムチキン組織」は、勢いだけで乗り切るものではありません。
むしろ、時間をかけてじっくりと煮込み、素材の味に染み込ませていくような、静かで深い熱狂です。

明日いきなり「全社員でダンスを踊ろう!」などと突飛なことをする必要はありません。
毎日の朝礼で、誰かの「小さな工夫」を取り上げて感謝する。
1on1で、部下の悩みを「辛さ」として受け止め、一緒に解決策を考える。
採用面接で、会社の「良いところ(甘さ)」だけでなく「課題(辛さ)」も正直に話し、「一緒に解決してくれませんか?」と口説く。
こうした地道な積み重ねが、組織の深み(コク)を作ります。
じっくり煮込んだタレは、簡単には冷めません。
一度築かれた信頼関係と、共有された文化は、ちょっとやそっとのトラブル(競合の出現や不況)では揺らがない強さを持つのです

最後に、これから就職・転職を考えているあなたへ。
もし、あなたが「ただ給料をもらえればいい」「言われたことだけやっていたい」と考えているなら、合わない会社が出てくるかもしれません。
ヤンニョムチキンを「食べる専門」の人に「辛い」会社は合わないかもしれないからです。
でも、もしあなたが「どうせ働くなら、手触り感のある仕事がしたい」 「完成された組織の歯車になるより、未完成の組織を一緒に作り上げていきたい」 「仲間と苦労を分かち合い、達成した時のあの旨味を味わいたい」
と思っているなら、まだ「秘伝のタレ」が完成していないキッチン(会社)を是非探してみてください。
もっとコクを出したいし、もっとパンチを効かせて今まさに社員みんなであーだこーだ言いながら、鍋をかき混ぜている最中の会社があるはずです。

ここに、あなたの持っている「スパイス(経験・個性)」が加わったら、その組織はどんな味に変わるのか。
想像するだけでワクワクしませんか?一度味わったら、もう他のフライドチキンには戻れない。
あなたの応募を待っている会社が、きっとあるはずです。

いかがでしたか?合わせてブランディングデザインにも興味がおありでしたら、ぜひ以下のリンクもご確認ください。

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