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「完成品」ばかり欲しがるな!“未完成”を楽しめる人材だけと出会う、逆張り広報術

この記事の目次

なぜ、私たちは「新品のテント」よりも「使い古した焚き火台」に惹かれるのか

キャンプ場での朝。
冷え込んだ空気の中で、コーヒーを淹れる時間。
ふと周りを見渡すと、ピカピカの最新ギアで全身を固めたキャンパーよりも、少し煤(すす)け、使い込まれた道具を器用に操っているキャンパーの方に、私は目を奪われます。

そこには「物語」があるからです。
「この傷はあの時の強風でついたんだ」「この焦げ跡は、子供が初めてマシュマロを焼いた時のものだ」。
そんなプロセス(過程)が刻まれた道具には、カタログスペックには載っていない「味」と「愛着」があります。

プライベートでは「過程も大切にする」「一緒に作り上げていきたい」という価値観を大切にし、少し不便なキャンプ場であえて手間を楽しむような休日を過ごしていても、月曜日に会社に来て「採用担当」の帽子を被った途端、私たちは真逆のことをしていないでしょうか?

「即戦力が欲しい」
「経験豊富な完璧な人材が欲しい」
「教育コストのかからない完成品が欲しい」

まるで、カタログから最高スペックの新品を取り寄せるように、傷一つない「完成された人材」ばかりを探し求めてしまう。
そして、いざ採用してみると「何かが違う」「すぐに辞めてしまった」と頭を抱える・・・。
もし、あなたが私と同じように、離職率やミスマッチに悩んでいるなら、一度立ち止まって考えてみてください。私たちは、「完成品」を求めすぎるあまり、本当に自社に必要な「未完成を楽しめる人材」を門前払いしているのではないか?

この記事では、あえて自社の「未完成な部分(課題)」をさらけ出し、それを一緒に解決したいと願う熱量の高い人材を集めるための「逆張り広報術」についてお話しします。
私たちも、飾らない言葉で「本質」を語りませんか?

1.「即戦力」という名の幻想と、ミスマッチの正体
〜完璧なパズルピースは、歪(いびつ)な形の穴にはハマらない〜

採用現場で飛び交う「即戦力」という言葉。
聞こえはいいですが、実は非常に危険なワードです。
多くの企業、特に成長フェーズにある企業や、変革を求めている企業の実態は、決して整理整頓された綺麗な状態ではありません。
マニュアルが未整備だったり、部署間の連携がギクシャクしていたり、システムが古かったり。
言わば「歪(いびつ)な形の穴」がたくさん空いている状態です。
そこに、大手企業で完璧に教育され、整った環境で成果を出してきた「正方形の綺麗なパズルピース(完成品人材)」を無理やりハメようとしたらどうなるでしょうか?
人材側の不満「なんでこんなことも決まっていないんだ」「効率が悪すぎる」「前の会社ではあり得なかった」
企業側の不満「スキルはあるはずなのに動けない」「文句ばかりで手を動かさない」
これが、典型的な「即戦力ミスマッチ」の正体です。

すぐに辞めていく人の多くは、能力が低いのではありません。
「整った環境で走る能力(ドライバー)」は高いけれど、「道路を舗装しながら走る能力(開拓者)」との相性が悪かっただけなのです。
私たちが本当に求めているのは、完成された綺麗なピースではありません。
「形が合わないなら、削って合わせましょうか?」「むしろ、穴の形を変えちゃいましょうか?」と言ってくれる、柔軟で、過程そのものを楽しめる人材のはずです。
それなのに、求人票には「整った環境です」「充実の研修制度」と、あたかも「舗装された道路」であるかのように書いてしまう。
これでは、ミスマッチが起きるのは当然です。

2.「映え」よりも「機能」。飾り気のない言葉の強さ

最近の採用サイトは、まるでファッション誌のようです。
お洒落なオフィスで談笑する社員、キラキラしたキャッチコピー、福利厚生のアピール。
いわゆる「映え」を意識した広報です。

しかし、本質重視の視点から見ると、これには少し違和感を覚えます。
「本当に仕事中にこんなに笑顔で談笑しているのか?」 「カフェのようなオフィスは、本当に生産性を高めているのか?」
派手なデザインよりも「動きやすさ」や「保温性」を正直に伝えるような、「働くという機能」にもっとフォーカスすべきではないでしょうか。

「アットホームな職場」ではなく「困った時に相談すれば、必ず誰かが手を止めてくれる文化があります」
「成長できる環境」ではなく、「まだマニュアルがない業務が多く、自分でルールを作る経験が積めます」
このように、事実をありのまま、無駄な修飾語を削ぎ落として伝えること。 それが「機能的」で「無駄のない」広報です。

一見、地味に見えるかもしれません。
しかし、真に仕事に向き合いたいと思っている求職者は、キラキラした言葉よりも、この「実用的な情報」に信頼を寄せ、反応してくれるのです。

3.「未完成」を公開する勇気
〜「ガレージブランド」としての誇りを持て〜

大手アウトドアメーカーだけでなく、最近は個人や小規模チームが作る「ガレージブランド」のキャンプギアも人気です。
大量生産品のような完璧さはないかもしれない。
少し無骨で、手作り感がある。
でも、作り手の「想い」がダイレクトに伝わり、「自分もこのブランドを応援したい」「一緒に育てたい」というファンがつきます。

私たちの会社も、言わば「ガレージブランド」です。
まだ完成していない。
課題だらけ。でも、だからこそ面白い。

この「未完成(Incomplete)」であることを、恥じるのではなく、最大の「売り(Value)」にする。
これが私の提唱する「逆張り広報術」の核心です。

具体的には、求人票やブログで「会社の課題(できていないこと)」をあえて公開します。

「現在、離職率を下げるための施策を模索中です。人事制度が追いついていません」
「新規事業を立ち上げましたが、マーケティングの専任者がおらず、手探り状態です」
「会議が無駄に長く、意思決定が遅いという課題があります」

普通なら隠したくなるような内容です。
しかし、これを公開することで、2つの劇的な効果が生まれます。

「お客様気質」の排除
「整った環境」を求める安定志向の人材は、これを見て応募を躊躇します。これでいいのです。
入社後の「こんなはずじゃなかった」を防げます。
「解決したがり」の誘引
一方で、「面白そうじゃないか」「その課題、私が解決してあげたい」「カオスな環境の方が燃える」という、変態的(褒め言葉です)な優秀層が反応します。

彼らは「完成品」を買いたいのではありません。
「未完成のプラモデル」を買って、自分で組み立て、塗装し、完成させるプロセスを楽しみたいのです。
会社の「課題」は、彼らにとっての「遊び場(活躍のフィールド)」なのです。

4.一緒に作り上げる「余白」のデザイン

これは、弊社が大切にしている「過程も大切」「一緒に作り上げていきたい」という価値観そのものです。
離職率を下げる(定着率を上げる)ための鍵も、ここにあります。

社員が会社を辞めるのは、会社が「他人事」だからです。
「経営陣が勝手に決めたルール」「誰かが作ったつまらない仕組み」。
そこに自分の意思が入っていなければ、愛着など湧きようがありません。

だからこそ、採用の段階から「余白(Room for creation)」を提示することが重要です。
求職者に対して、私はこう語りかけます。
「私たちの会社は、まだ完成度60%です。残りの40%は、あなたと一緒に作っていきたい。あなたの色で埋めてほしいのです」

これは単なる殺し文句ではありません。
実際に、業務範囲や役割に「余白」を残しておくのです。
職務定義書をガチガチに固めすぎず、「〇〇分野の改善提案」という自由枠を設ける。

面接で「弊社のこの課題、あなたならどう解決しますか?」と問いかけ、その場でディスカッション(共同作業)をする。
「自分が提案して採用されたアイデア」「自分が苦労して立ち上げたプロジェクト」。
その「過程」こそが、社員を会社に繋ぎ止める最強の接着剤になります。

完成されたマニュアルを渡して「この通りにやって」と言うのは、組織論的にも疑問を感じます。
「道具は揃えた。地図もある。でもルートは決まっていない。どの道を行くか、一緒に相談しながら決めよう」。
そう言ってくれるリーダーにこそ、自律的な人材は惹かれるはずです。

5.実践!「完成品お断り」の求人票ライティング
〜フィルターをかけるための具体的な言葉選び〜

では、具体的にどのような言葉で求人票を書けば、「未完成を楽しめる人材」に出会えるのでしょうか。
私が実践している、いくつかの「逆張りフレーズ」をご紹介します。

1. タイトルで「参加」を促す
× 通常:「【急募】営業マネージャー募集!安定した基盤で働きませんか?」
○ 逆張り:「【求む、開拓者】営業組織が未整備です。ゼロから最強のチームを作り上げるプロセスを、泥臭く楽しめるマネージャー募集」

2. 「求める人物像」で価値観を鋭く問う
× 通常: 「コミュニケーション能力があり、主体的に動ける方」
○ 逆張り: 「完成されたレールの上を走ることに退屈さを感じる方。不完全な状況を嘆くのではなく、『自分が直してやる』とワクワクできる方」

3. 「仕事内容」でリアルな苦労を伝える
× 通常:「クライアントへの提案活動全般をお任せします」
○ 逆張り:「現在、提案資料の型も定まっていません。まずは過去の膨大な資料を分析し、勝ちパターンを見つける地味な作業から始まります。その『型作り』から担っていただきます」

これらの言葉は、安定志向の人から見れば「ブラック企業」に見えるかもしれません。
しかし、私たちが欲しい「過程を楽しめる人」「向上心のある人」から見れば、「やりがいのある挑戦」に見えるのです。

ターゲットを絞るとは、「誰かに嫌われる勇気」を持つことでもあります。

6.ワークライフバランスと、仕事の「手触り感」は両立する

ここまで「未完成」「課題」「泥臭さ」を強調してきましたが、誤解してほしくないことがあります。
それは、「未完成な会社=長時間労働のブラック企業」ではないということです。

私が求めているのは、時間を浪費するカオスではありません。
「自らの手で秩序を作っていくクリエイティブなカオス」です。

「まだ決まっていない」ということは、「自分で決めていい」ということです。
「仕組みがない」ということは、「自分が一番働きやすい仕組みを作れる」ということです。

効率的なツールを導入して、社員全員がもっと働きやすくなるように改革できるかもしれない、という可能性が、ここにはあります。

完成された大企業では、ハンコ一つなくすのに3年かかります。
しかし、私たちの規模なら、あなたの提案一つで明日から変わるかもしれない。
この「手触り感(コントロール感)」こそが、仕事の最大の面白さだと思うのです。

「完成品」を求める人は、誰かが整えてくれた環境で、不満を言いながら働きます。
「未完成」を楽しめる人は、自分で環境を整え、楽しみながら働き、そして定時で帰ります。

どちらが、長く幸せに働けるか。
そして、どちらが企業にとって「良い人材」か。答えは明白です。

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