この記事の目次
1.自社の自身がある「良いもの」ちゃんと届けられていますか?
スタートアップが生き抜くために
「私たちの作る製品(サービス)は、本当に良いものなんです。でも、なぜか思うように選んでもらえない…」
新しいアイデアと情熱で走り出したばかりのスタートアップ。そんな皆さんが、最初にぶつかる大きな壁が、長年市場で信頼を築いてきた「老舗企業」の存在ではないでしょうか。
2. まずは敵を知る:老舗企業の「すごいところ」と「狙えるチャンス」

戦う相手のことを知らずして、勝利はありませんよね。
まずは、競合となる歴史ある企業について、感情的にならず、冷静に分析してみましょう。
「古いだけじゃないか」なんて思わずに、彼らがなぜ長く愛されているのか、その「すごいところ」をしっかり理解することが大切です。
老舗企業の「すごいところ」(=高い壁だけど、学ぶべき点)
- 信頼と実績: 長い時間で築かれた「〇〇社なら安心」というイメージは、やっぱり強いですよね。たくさんの実績がそれを裏付けています。
- ブランド認知度: みんなが知っている、というだけで大きなアドバンテージ。スタートアップが広告費をかけても、なかなか追いつけない部分です。
- 資金力: 新しい挑戦や、いざという時の体力があります。価格競争になると、ちょっと分が悪いかもしれません。
- 安定した販路や顧客: すでに取引先やファンがたくさんいるのは、経営の安定につながります。
- 組織力と安定性: しっかりした組織は、働く人にとっても安心感がありますよね。
老舗企業の「狙えるチャンス」(=スタートアップの突破口!)

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動きの速さ: 大きな組織は、何かを決めるのに時間がかかることがあります。
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→ Point:スピードで勝負! 市場の変化にサッと対応しましょう。
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新しいことへの挑戦: 過去の成功体験が、逆に新しい変化への対応を遅らせることも。
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→ Point:新しい価値観で勝負! 世の中の新しいニーズに応えましょう。
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お客様との距離: 大きくなると、一人ひとりのお客様との距離が遠くなりがちです。
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→ Point:お客様との近さで勝負! 一人ひとりと丁寧に向き合い、ファンを作りましょう。
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小さなニーズへの対応: 全員向けの大きなビジネスが中心で、細かいニーズに応えるのが苦手な場合も。
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→ Point:ニッチな分野で勝負! 特定の分野で「ここなら絶対うち!」と言われる存在を目指しましょう。
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3. 私たちの武器を磨こう!:スタートアップだけが持つ特別な力

- スピードと柔軟性: なんといってもこれ!「やってみよう!」から実行までが速い。お客様の声を聞いて、すぐに改善できる。この身軽さは、大きな組織にはない、本当にすごい武器です。どんどん試して、どんどん良くしていきましょう。
- 新しい視点とアイデア: 「普通はこうだよね」という常識にとらわれず、自由な発想ができるのがスタートアップの魅力。「こんなのあったら面白いかも!」というひらめきが、世の中を変えることだってあります。その斬新さが、お客様を惹きつけます。
- あふれる情熱とストーリー: 「なぜこの事業を始めたのか」「どんな世界を作りたいのか」…その熱い想いは、人の心を動かす力を持っています。創業者の顔が見える、ストーリーがある。それが共感を呼び、応援してくれるファンを集めます。かっこつけず、正直な想いをどんどん語りましょう。
- お客様との近さ: 一人ひとりのお客様と直接コミュニケーションをとって、深い関係を築きやすいのも強みです。SNSで気軽に話したり、イベントで直接会ったり。「ちゃんと私たちのことを見てくれている」と感じてもらえると、お客様は離れません。
4. 「らしさ」で勝負する!なぜブランディングが老舗への最強の対抗策なのか?

さて、いよいよ本題の「ブランディング」についてです。「ブランディングって、要はかっこいいロゴやおしゃれなWebサイトを作ることでしょ?」と思っている方もいるかもしれませんが、実はそれだけではありません。もちろん、それらも大切な要素ですが、ブランディングの本質は、もっと深く、もっと広いものなんです。
ブランディングとは、「あなた(の会社)は何者で、何を大切にし、顧客に何を約束し、どんな体験を提供するのか」という、企業の「らしさ」そのものを定義し、伝え、浸透させていく活動全体を指します。それは、企業の存在意義や魂のようなもの、と言ってもいいかもしれません。
では、なぜ歴史の浅いスタートアップにとって、このブランディングが老舗企業に対抗するための「最強の武器」になるのでしょうか? その理由をじっくり見ていきましょう。
理由1:一瞬で「何者か」を伝える、第一印象の決定力
理由2:価格競争から抜け出す、「価値」で選ばれる理由作り
理由3:歴史の代わりに「何を大切にしているか」で信頼を築く
理由4:ミッションへの共感が、熱いファンと仲間を引き寄せる
理由5:真似できない「文化」や「世界観」で、模倣困難性を生む
製品やサービスそのものは、いずれ競合に真似される可能性があります。しかし、企業独自のミッション、バリュー、ストーリー、そしてそれらに基づいて築かれた組織文化や顧客との関係性といった「らしさ」の総体は、簡単には真似できません。
なぜなら、それは一貫した活動の積み重ねによって、時間をかけて醸成されるものだからです。この模倣困難な「ブランド」こそが、スタートアップにとって長期的な競争優位性を築くための重要な砦となるのです。

このように、ブランディングは、単なるイメージ戦略ではなく、スタートアップが持つ「新しさ」「情熱」「柔軟性」といったアドバンテージを最大限に活かし、老舗企業の「歴史」「規模」といった強みとは異なる次元で戦うための、極めて戦略的な活動なのです。次のセクションでは、このブランディングを具体的にどう進めていくのか、そのステップを見ていきましょう。
5. 実践!老舗が真似できない「物語」と「価値」を創るブランディング・ステップ
「ブランディングが大事なのはわかったけど、じゃあ具体的に何から始めればいいの?」と思いますよね。
大丈夫です! ここからは、あなただけの「らしさ」を見つけ、育てていくための具体的なステップを、一緒に見ていきましょう。
難しく考えず、まずは自分たちの心と向き合うことから始めてみてください。
Step 1: 自分たちの「核」を見つける ? ミッション・ビジョン・バリューの言語化
- すべての始まりは、ここです。あなた(たち)は、
「なぜこの事業をやっているのか?(Mission: 使命)」
「この事業を通じて、どんな未来を実現したいのか?(Vision: 目指す姿)」
「そのために、何を大切にして行動するのか?(Value: 価値観・行動指針)」
を、自分の言葉で明確にしてみましょう。 - これは、かっこいい言葉を探す作業ではありません。
創業時の熱い想い、譲れないこだわり、お客様への約束など、あなたたちの根っこにある「本音」を見つける旅です。 - これが明確になることで、発信するメッセージに一貫性が生まれ、判断に迷ったときの「羅針盤」にもなります。
この「核」こそが、老舗には真似できない、あなただけの尖ったメッセージの源泉になるんです。
Step 2: 理想のお客様像(ペルソナ)を明確にする ? 誰に深く刺さりたい?
- 「すべての人に届けたい」という気持ちもわかりますが、スタートアップのリソースは限られています。だからこそ、「特に、こんな人に私たちの価値を届けたい!」という理想のお客様像(ペルソナ)を具体的に描くことが重要です。
- 年齢、性別、職業、ライフスタイルだけでなく、どんなことに悩み、何を喜び、どんな価値観を持っている人なのか? 深く掘り下げてみましょう。
- ペルソナを明確にすることで、メッセージがぼやけず、特定の層に「これは私のためのものだ!」と強く響くようになります。ニッチ戦略を成功させるための基礎固めです。
Step 3: 独自の価値提案(UVP)を定義する ? あなたが選ばれる「たった一つの理由」は?
- お客様は、なぜ数ある選択肢の中から、あなたの商品やサービスを選ぶのでしょうか? その「独自の強み」であり「お客様にとってのメリット」を、一言で言い表せるようにしましょう。これがUVP(Unique Value Proposition)です。
- 「老舗のA社は〇〇が強いけど、私たちは△△で勝負する」「競合B社にはない、□□という価値を提供する」といった形で、競合との違いを意識しながら、自社ならではの提供価値を明確にします。
- 「安くて早い」だけでなく、「〇〇な体験ができる」「△△な悩みを解決できる唯一の存在」といった、老舗にはないユニークな価値を見つけ出すことがポイントです。
Step 4: 心を動かすブランドストーリーを紡ぐ ? あなたの物語を語ろう
- 人は、単なるスペックや機能よりも、「物語」に心を動かされます。なぜこの事業を始めたのかという創業の背景、開発での苦労話、お客様との心温まるエピソード、目指す未来への情熱…。
- これらのストーリーを、飾らない言葉で語ることで、顧客はあなた(の会社)に親近感を覚え、感情的なつながりを感じるようになります。
- 完璧なサクセスストーリーである必要はありません。むしろ、試行錯誤や失敗談も含めた等身大の物語が、共感を呼び、熱いファンを生むきっかけになることも多いのです。
Step 5: 一貫したメッセージを発信する ? あらゆる接点で「らしさ」を徹底!
- ステップ1~4で見つけた「核」「ペルソナ」「UVP」「ストーリー」。これらを、Webサイト、SNS、広告、資料、メールの署名、お客様との会話、製品パッケージに至るまで、あらゆる顧客接点(タッチポイント)で、一貫性を持って表現し続けることが重要です。
- 発信するメッセージやデザイン、トーン&マナーがバラバラだと、顧客は混乱し、ブランドイメージが定着しません。「あの会社は、いつも言っていることとやっていることが同じだ」というブレない姿勢が、信頼につながっていきます。
これらのステップは一度やったら終わり、ではありません。事業の成長や市場の変化に合わせて、常に見直し、磨き続けていくことが大切ですよ。
とはいえ…どうやって言語化する…?

とはいえ、「自分たちの核って言われても…」「どうやって言語化すればいいんだろう?」と、これらのステップを自社だけで進めることに難しさを感じるかもしれませんね。
そんな時は、専門家の力を借りるのも一つの有効な方法です。例えば、私たちのブランディング策定サービス「tsumugi(つむぎ)」では、まさにこうした「らしさ」を見つける旅をお手伝いしています。
私たちは、お客様とじっくり向き合い、伴走しながら、ゼロから一緒にブランドの根幹となるCI(コーポレートアイデンティティ)をはじめとした、企業の魂とも言えるアイデンティティを形にしていくことを大切にしています。
ただ定義するだけでなく、それが社内外にしっかりと浸透していくための支援まで、トータルでサポートさせていただいています。
もし、「自分たちらしさ」を見つけ、それを確かな力に変えていきたいけれど、どう進めたら良いか迷っている…という方がいらっしゃれば、ぜひお気軽にご相談くださいね。私たちと一緒に、未来を紡ぐ(tsumugi)お手伝いができれば幸いです。
6. 見た目が9割?「見せ方」で差をつけるデザイン戦略
「人は見た目が9割」なんて言葉もありますが、ビジネスにおいても「見せ方」、つまりデザインは、想像以上に重要な役割を担っています。特に、まだ実績や知名度のないスタートアップにとって、デザインは「らしさ」を伝え、信頼を獲得するための強力な武器になります。
デザインは、単に「かっこよくする」「おしゃれにする」ということだけではありません。ステップ5までで定義した「らしさ」や「価値」を、視覚的に、そして直感的に伝えるための戦略的なコミュニケーションツールなのです。
「第一印象」で負けないために、デザインができること
プロフェッショナルで洗練されたデザインは、「ちゃんとした会社だな」「しっかりしてそうだな」という印象を与えます。
逆に、素人っぽさや安っぽさを感じるデザインは、それだけで「この会社、大丈夫かな?」と不安にさせてしまう可能性があります。
特にWebサイトや名刺など、最初に目にするもののデザインは重要です。
ロゴの形や色、Webサイトで使う写真やイラスト、フォントの種類など、デザインの要素一つひとつが、あなたの会社の「世界観」を表現します。ターゲット顧客に「なんか好きだな」「私たちの感覚に合うな」と感じてもらい、記憶に残るブランドイメージを築くことができます。
デザインは、言葉以上に、その企業の「センス」や「大切にしている価値観」を伝えることがあります。
老舗企業にはない「新しさ」「先進性」「遊び心」「温かみ」などを視覚的に表現することで、「他とは違うぞ」という個性を際立たせることができます。
具体的な「見せ方」のポイント
ロゴ、Webサイト、名刺、提案資料、製品パッケージ、SNSの投稿画像、さらにはオフィス空間まで…。
顧客が触れる可能性のあるすべてのタッチポイントで、色使い、フォント、デザインのテイストなどを一貫させましょう(トーン&マナーを揃える)。これにより、ブランドイメージがブレなくなり、認知されやすくなります。
スタートアップだからといって、デザインで手を抜いてはいけません。
安易なフリー素材の多用や、素人感のあるデザインは、製品やサービスの品質まで低く見せてしまう恐れがあります。
細部にまでこだわり、品質感や信頼感を演出することが大切です。
誰に届けたいデザインなのかを常に意識しましょう。
例えば、若者向けサービスなのに堅苦しいデザインだったり、シニア向けなのに小さすぎる文字だったりすると、メッセージは届きません。ペルソナが好むテイストや、分かりやすさを考慮したデザインを心がけましょう。
プロへの投資も検討しよう
「デザインは専門外だし、自分でやるのは難しい…」と感じる方も多いでしょう。
デザインは、専門的な知識とスキルが求められる領域です。もちろん、最初は自分たちでできる範囲で始めるのも良いですが、ある程度の段階になったら、プロのデザイナーに投資することも、費用対効果の高い選択肢となり得ます。
良いデザインは、ビジネスを加速させる力を持っています。予算と相談しながら、外部の力を借りることも積極的に検討してみてくださいね。
7. 顧客体験(CX)全体でブランドを体現し、ファンを創る
ブランディングはロゴやWebサイトを作って終わりではありません。
デザイン戦略で「見せ方」を整えることも重要ですが、それと同じくらい、いや、それ以上に大切なのが「顧客体験(CX: Customer Experience)」です。
顧客体験とは、お客様があなたの会社やサービスを知り、興味を持ち、購入し、利用し、そしてその後のサポートを受けるまで、すべての接点(タッチポイント)で感じること・経験することの総和です。
どんなに素晴らしい製品やサービスを作っても、問い合わせの対応が悪かったり、購入後のフォローがなかったりすれば、お客様はがっかりして離れていってしまいます。
体験こそが、ブランドの真価を決める
- 分かりやすく、スムーズに情報収集できるWebサイト
- 問い合わせに対する迅速で丁寧なレスポンス
- ワクワクするような購入プロセスやパッケージ
- 期待を超える製品・サービスの使い心地
- 困ったときに親身になってくれるアフターサポート
感動体験が、最強の武器になる
特にスタートアップにとって、この顧客体験は、老舗企業に対して大きな差をつけることができる領域です。
なぜなら、一人ひとりのお客様に寄り添った、丁寧でパーソナルな対応は、規模が小さいからこそ実現しやすいからです。
期待を少し超えるような「おもてなし」や、困りごとに対する親身なサポートは、お客様に「感動」を与えます。
そして、感動したお客様は、単なるリピーターではなく、熱狂的な「ファン」へと変わっていきます。
ファンになったお客様は、自らSNSで発信してくれたり、友人に薦めてくれたりします。これは、どんな広告よりも強力な「口コミ」となり、新たな顧客を呼び込む好循環を生み出します。
これこそ、スタートアップが目指すべき、持続可能な成長の形ではないでしょうか。
製品やサービスを磨くことはもちろん大切ですが、それと同じくらい、お客様との一つひとつの接点を大切にし、「またこの会社と関わりたい」と思ってもらえるような、素晴らしい顧客体験をデザインしていくこと。
それが、真に愛されるブランドを築くための鍵となります。
8. 【最重要】歴史ある会社に「負けない」ための具体的なアクションとマインドセット
さて、ここまでブランディング、デザイン、顧客体験と、スタートアップが持つべき武器についてお話ししてきました。
このセクションでは、それらを実戦で活かし、歴史ある競合に「負けない」ための、より具体的なアクションプランと、持つべき心構え(マインドセット)について、改めて整理しましょう。ここは、この記事の中でも特に重要なポイントです!
ゲリラ戦の発想で、賢く戦う!具体的なアクションプラン
体力やリソースで劣るスタートアップは、老舗企業と同じ戦い方をしていては勝ち目がありません。
まるで少数精鋭のゲリラ部隊のように、知恵とスピード、そして柔軟性を活かした戦い方が求められます。
意思決定から実行まで、常に最速を意識します。市場の変化や顧客の声に素早く反応し、改善を繰り返す。老舗企業が稟議書を回している間に、私たちはもう次のアクションを起こしている、くらいのスピード感が理想です。
多額の広告費はかけられなくても、SNSやブログなどを活用すれば、低コストでダイレクトに情報を届けられます。
ポイントは、企業アカウントとしてだけでなく、創業者やスタッフの「顔」や「想い」が見える、人間味あふれる発信を心がけること。これが共感を呼び、ファンを増やします。
お客様を単なる「買い手」としてではなく、一緒にブランドを育てていく「仲間」「共犯者」として巻き込みましょう。オンラインコミュニティを運営したり、イベントを開催したりして、顧客同士、そして顧客と企業がつながる場を作ることで、強いエンゲージメントが生まれます。
自社だけで全てを賄おうとせず、他の企業や個人と積極的に連携(アライアンス)しましょう。
弱みを補い合ったり、お互いの強みを掛け合わせたりすることで、一人では生み出せない大きな価値を創出できます。
持つべきマインドセット:未来を切り拓くための心のエンジン
どんなに優れた戦略や武器も、それを実行する「心」が伴わなければ意味がありません。
歴史の壁に挑むスタートアップが、常に持ち続けたいマインドセットです。
「お金がないからできない」「人が足りないから無理」と考えるのではなく、「限られたリソースで、どうすれば目的を達成できるか?」と知恵を絞りましょう。アイデア次第で、お金や人手不足は乗り越えられます。
できない理由を探すのは簡単です。でも、それでは何も変わりません。どんな困難な状況でも、「どうすれば勝てるか?」「どうすればこの状況を打開できるか?」と、常に前向きに、勝利への道筋を考え続ける姿勢が、未来を切り拓きます。
老舗企業は手ごわい相手ですが、恐れる必要はありません。私たちには、私たちだけの戦い方があります。これらのアクションとマインドセットを胸に、自信を持って挑戦していきましょう!
9. 【事例紹介】彼らはどうやって「らしさ」で老舗に対抗したか?
事例1:クラフトチョコレート「カカオ・ストーリー」

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市場と競合: 大手製菓メーカーが圧倒的なシェアを持つチョコレート市場。有名パティシエの高級ブランドも多数存在。
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カカオ・ストーリーの「らしさ」:
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ミッション: 「一粒のチョコから、生産者の笑顔とお客様の感動をつなぐ」
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ターゲット: エシカル消費に関心が高く、ストーリー性を重視する20代後半~40代の女性。
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価値提案: 単一産地のカカオ豆のみを使用し、生産者の顔が見えるトレーサビリティを徹底。カカオ豆本来の個性を最大限に引き出す製法。
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ブランディング&デザイン戦略:
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ストーリーテリング: WebサイトやSNSで、カカオ農園の様子や生産者のインタビュー、チョコレートができるまでの工程を丁寧に発信。「どこで、誰が、どんな想いで作っているか」を伝えることに注力。
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デザイン: パッケージには、カカオ豆の産地をイメージした手書き風のイラストと、生産者の名前を記載。温かみがあり、作り手の想いが伝わるデザインを採用。大手メーカーの画一的なデザインや、高級ブランドの洗練されすぎたデザインとは一線を画す。
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顧客体験: オンラインストアでの購入者には、手書きのメッセージカードを同封。小規模なワークショップを開催し、顧客との直接的な交流を深める。
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結果: 価格は大手メーカーより高いものの、「ストーリーに共感した」「生産者を応援したい」というファンを獲得。SNSでの口コミが広がり、特定のセレクトショップなど、価値観に合う販路を開拓。大手とは異なる「顔の見えるクラフトチョコレート」という独自のポジションを確立した。
事例2:中小企業向け勤怠管理SaaS「キリカエ」

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市場と競合: 大手IT企業が提供する高機能・高価格な勤怠管理システムや、昔ながらのタイムカード、Excel管理などが混在する市場。
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キリカエの「らしさ」:
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ミッション: 「バックオフィスの『面倒くさい』をなくし、中小企業の創造性を解放する」
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ターゲット: ITに詳しくない担当者でも簡単に使えることを重視する、従業員50名以下の中小企業経営者・総務担当者。
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価値提案: 複雑な機能を削ぎ落とし、「打刻」「申請・承認」「給与計算連携」に特化。誰でも直感的に使えるシンプルなUI/UXと、圧倒的な低価格。手厚いオンラインサポート。
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ブランディング&デザイン戦略:
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ネーミングとロゴ: 「キリカエ」という覚えやすく親しみやすい名称。「面倒な作業から、創造的な仕事へ切り替える」という意味を込める。ロゴもシンプルで分かりやすいデザインに。
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Webサイトと広告: 専門用語を避け、「3分で導入完了」「スマホで簡単打刻」など、ターゲットに響く分かりやすい言葉でメリットを訴求。導入事例として、同規模の企業の「楽になった!」という声を積極的に掲載。
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デザイン: システム画面は、説明書を読まなくても使えるよう、ボタンや文字を大きく、色数を少なくデザイン。徹底的に「シンプルさ」「分かりやすさ」を追求。大手システムの多機能だが複雑な画面とは明確に差別化。
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顧客体験: 無料トライアル期間を設け、導入前の不安を解消。チャットサポートは迅速かつ丁寧な対応を心がけ、「ITに詳しくなくても安心」という信頼感を醸成。
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結果: 大手システムの高機能は不要だが、タイムカードやExcel管理からは脱却したい、という中小企業の隠れたニーズを捉え、急成長。低価格と使いやすさ、手厚いサポートが評価され、「中小企業向け勤怠管理ならキリカエ」という認知を獲得。大手とは異なる「シンプル・低価格・手厚いサポート」という独自の土俵で勝負している。
これらの事例から学べること
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誰に何を届けたいか(ターゲットと価値)を徹底的に絞り込むこと。
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自社の「想い」や「ストーリー」を正直に、熱意を持って語ること。
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デザインを「見た目」だけでなく、「らしさ」を伝え、使いやすさを実現するための戦略的ツールと捉えること。
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顧客との丁寧なコミュニケーションを通じて、ファンを創っていくこと。
あなたの会社なら、どんな「らしさ」を打ち出し、どんなストーリーを語りますか? ぜひ、これらの事例をヒントに、自社ならではの戦い方を考えてみてください。
10. まとめ:歴史に臆せず、「あなたらしさ」で未来を切り拓け
ここまで、創業間もないスタートアップが、歴史ある競合企業に「負けない」ためのブランディングとデザイン戦略について、具体的なステップや考え方をお伝えしてきました。「良いものを作っているのに、なぜか選ばれない…」
そんな悔しさを感じているなら、ぜひ思い出してください。あなたには、歴史や規模では測れない、素晴らしい価値と可能性が秘められています。
老舗企業が持つ「歴史」や「信頼」はたしかに強力ですが、それがすべてではありません。
スタートアップには、「スピード」「新しい視点」「情熱」「顧客との近さ」といった、今の時代だからこそ輝く、かけがえのない武器があります。
その武器を最大限に活かす鍵こそが、自社の「らしさ」を深く理解し、定義すること(=ブランディング)、そして、その「らしさ」を効果的に、魅力的に伝えること(=デザインと顧客体験)なのです。
決して、老舗企業と同じ土俵で、体力勝負をする必要はありません。
自分たちの「核」となる想いは何か?本当に届けたいお客様は誰か?他にはない、独自の価値は何か?
これらを突き詰め、あなただけの「物語」を紡ぎ、一貫したメッセージと心揺さぶる体験を通じて、顧客との間に強い絆を築いていくこと。それが、歴史に左右されず、主体的に選ばれ、市場で独自の輝きを放つための道筋です。
この記事でお伝えしたことが、皆さんの「負けない」ための戦い方を見つけるヒントになれば、これほど嬉しいことはありません。
さあ、歴史に臆することなく、あなたの会社の「らしさ」という最高の武器を手に、未来を切り拓いていきましょう!
まずは、自社の「核」となる想いを、もう一度見つめ直すことから始めてみませんか? あなたの挑戦を、心から応援しています!
ブランディングデザインにご興味がございましたら、ぜひ以下のリンクもご確認ください。