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採用は「選考」から「物語」へ。会社の“素顔”を伝えたら、本当に欲しい人材が集まり始めた

この記事の目次

採用は「選考」から「物語」へ。
会社の“素顔”を伝えたら、本当に欲しい人材が集まり始めた

「良い人材が採れない」のではなく、「採用したはずの良い人材が、定着しない」。
もし今、あなたがそんな採用のジレンマを抱えているなら、少しだけ時間を取ってこの記事を読んでみてください。
今回は、ある企業の採用担当者様がミスマッチの連鎖を断ち切った、実話に基づいた物語をお届けします。
彼の気づきの中に、あなたの会社の明日を変えるヒントが隠されているかもしれません。

「またか・・・」と頭を抱えた私が、採用のミスマッチ地獄から抜け出した話

一本の知らない番号からの電話が、私の穏やかだった午後を打ち砕いた。
「わたくし、退職代行サービスの者です。貴社にご在籍の、鈴木様の件でご連絡いたしました」
受話器から聞こえてきた、事務的で感情のない声。
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「退職・・・代行?」。頭の中で、単語がバラバラに浮かぶ。

電話の向こうでは、淡々と説明が続く。
鈴木君が本日付で退職を希望していること。
明日から出社はせず、今後の連絡はすべてこのサービスを通してほしいこと。
必要な手続き書類は、後日郵送されること。

反論も、質問も、差し挟む隙はなかった。
数分後、一方的に切られた電話を握りしめたまま、私は呆然とした。
視線の先には、鈴木君のデスク。
昨日、「お疲れ様です」と笑顔で帰っていった彼の姿が目に焼き付いている。
話すことすら、できなかったのか。

「またか・・・」。これで、今年に入って3人目だ。彼の将来を期待し、何度も面接を重ね、社長も「彼なら間違いない」と太鼓判を押してくれたはずだった。
「私の、人を見る目がなかったのだろうか」
社長室に向かう私の足取りは、鉛のように重かった。
PCの画面に映る求人サイトの管理画面が、まるで自分の無能さを突きつけているように見えた。

第一章:なぜ、ウチの会社は人が定着しないんだ?

私の名前は佐藤。社員30名ほどのIT企業で、採用を任されている。
もともとは総務の担当だったが、事業拡大に伴って採用が急務となり、私に白羽の矢が立った。

しかし、私の採用基準は、いつも揺れていた。

以前、とにかく即戦力が欲しくて、技術スキルが高いAさんを採用した。
確かに彼のスキルは本物だったが、チームと協調しようとせず、社内で孤立し、半年で辞めてしまった。

その反省から、次は「人柄」を重視しようと、物腰が柔らかく、誰からも好かれそうなBさんを採用した。
しかし、彼女は自ら仕事を見つけて動くのが苦手で、「指示を待つ」姿勢が変化の速いウチの社風に合わず、徐々にパフォーマンスが落ちていった。
そして1年後、「もっと自分に合う場所があると思う」と言い残し、彼女も会社を去った。

スキルか、人柄か。
即戦力か、ポテンシャルか。
考えれば考えるほど、正解がわからなくなる。
いつしか私は「良い人が応募してきてくれない」「採用市場が厳しいから仕方ない」と、原因を自分たちの外に求めるようになっていた。

第二章:間違いは「見極め」ではなく「伝え方」にあった

そんな八方塞がりの状況を変えるきっかけは、ある外部のブランディング専門家との出会いだった。
自社のパンフレット改訂の相談で呼んだはずが、話はいつしか採用の悩みに移っていた。

「佐藤さんは、AさんやBさんに、面接でどんなお話をされていましたか?」

専門家は穏やかに尋ねた。
私は、事業内容や仕事のやりがい、福利厚生といった、いわゆる「魅力」を一生懸命に説明していたことを伝えた。

すると、彼に
「素晴らしいですね。では、**『ウチの会社のちょっと泥臭いところ』や『入社後にぶつかるであろう壁』**について、正直にお話しされたことはありますか?」
と質問された。

正直、私は「えっ?!」と思った。
そんなことを言えば、候補者が辞退してしまうではないか。
私は、会社の「良い面」を磨き上げ、いかに魅力的に見せるかということばかりに腐心していた。

「候補者が知りたいのは、光の部分だけではありません。
むしろ、その会社の『当たり前』…例えば、仕事の進め方のクセや、評価される人物像、大変だけど乗り越えた先にある本当のやりがい、といった生の情報です。
会社の『素顔』を正直に伝えないままでは、入社後に『こんなはずではなかった』というギャップが生まれるのは当然です。
問題は『見極め』の精度ではなく、最初の『伝え方』にあるのかもしれません」

彼の言葉は、私の頭をハンマーで殴られたような衝撃だった。
私たちは、候補者を「選考」することに必死で、私たちのことを正しく「理解」してもらう努力を怠っていたのだ。

第三章:僕たちが本当に伝えるべきこと

その日から、私の挑戦が始まった。

まず、社長や各部署のリーダー、若手社員たちに声をかけ「ウチの会社で働くって、正直どうですか?」というテーマでワークショップを開いた。

最初は当たり障りのない意見が多かったが、「良いことも悪いことも、全部出し切りましょう」と本音で向き合うと、面白いように言葉が出てきた。
「ウチは、マニュアルが完璧じゃないから、自分で考えて動かないとキツイ」
「でも、その分、若手でも手を挙げれば挑戦させてもらえる裁量の大きさがある」
「クライアントの要望が厳しくて徹夜することもあるけど、チームで乗り切った後の達成感は半端ない」
「社長との距離が近くて、直接フィードバックをもらえるのは刺激的だ」

出てきたのは、キラキラした言葉ばかりではなかった。
むしろ、不器用で、泥臭い、人間味あふれる「素顔」だった。
しかし、不思議なことに、その「素顔」こそが、私たちが共有し、大切にしてきた価値観そのものだと気づいた。

私たちは、この**「正直な物語」**を伝えることに決めた。

求人票の文面を、待遇や条件の羅列から、「私たちは、こんな価値観を大切にしています」「こんな人と一緒に、こんな未来を作りたい」というメッセージに変えた。

面接では、こちらが一方的に質問するのではなく、「何か、ウチに対して不安な点はありますか?」と問いかけ、候補者の疑問や懸念に、社員が正直に答える時間を設けた。

そして、今
この取り組みを始めてから、応募者の数は、少し減った。
しかし、面接に来る人たちの目の色は、明らかに変わった。
私たちの「物語」を読み込み、共感し「面白そうですね」と言ってくれる人たちが現れ始めたのだ。

そして、そうして入社した仲間たちは、驚くほど会社にフィットし、以前よりもずっと長く、そして楽しそうに働いてくれている。
離職率は、劇的に改善した。

今ならわかる。
採用とは、会社の「物語」を誠実に語り、その物語に心を動かされた仲間を探す旅なのだ。
スキルや経歴は、その旅の道具の一つに過ぎない。

この記事を読んでいるあなたも、かつての私と同じように悩んでいるかもしれない。
もしそうなら、一度立ち止まって、自問してみてほしい。

「私たちは、会社の『素顔』を、未来の仲間に正直に語れているだろうか?」

あなたの会社にも、まだ語られていない、魅力的な物語が眠っているはずです。
その物語を見つけ、紡ぎ出すことが、ミスマッチという長いトンネルを抜ける、最初の、そして最も確実な一歩となるでしょう。

いかがでしたか?もしかしたら、思い当たる部分があるかも、と思ったあなた。
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