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なぜ、「ワークマン」はただの作業着屋から、誰もが知る人気ブランドになれたのか?

この記事の目次

「作業着屋」が、なぜこれほどまでに熱狂的なファンを生み出せたのか?

数年前まで、「ワークマン」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「現場で働く職人さんのためのお店」という、少し無骨なイメージではなかったでしょうか。

それが今や、大型ショッピングモールの一等地に「WORKMAN Plus」といったお洒落な店舗を構え、アウトドアやバイクツーリングを楽しむ若者から、雨の日の自転車送迎に奮闘する主婦、ガーデニングを愛するシニア層まで、実に幅広い層から絶大な支持を集める人気ブランドへと変貌を遂げました。

この劇的な変化の理由を、多くのメディアは「プロ品質の製品が、圧倒的に安く手に入るから」と解説します。

しかし、本当にそれだけが理由なのでしょうか?

考えてみれば、ワークマンの製品は、昔からプロが認める「高機能・高品質・低価格」でした。製品の性能そのものは、実は大きくは変わっていないのです。

この記事では、ワークマンの成功の本質が、単なる製品力ではなく、自社の「本当の強み」を深く見つめ直し、その「伝え方」を劇的に変えた、見事なリブランディング戦略にあることを解き明かしていきます。


その成功物語の中には、私たちのような、特に専門分野で強みを持つ中小BtoB企業が学ぶべき、多くの重要なヒントが隠されています。

リブランディング以前のワークマン
「プロが認める品質」が、一般客に届かなかった時代

まず、変革以前のワークマンが、決して「弱い」会社ではなかったことを理解することが重要です。

揺るぎない、本物の「強み」の存在

もともとワークマンは、建設現場や工場、厨房といった、雨風にさらされ、油で汚れ、常に危険と隣り合わせの過酷な環境で働くプロたちの間で、「高品質で、高機能、そして圧倒的に丈夫で安い」という、絶対的な信頼を勝ち得ていました。
それは、付け焼き刃ではない、長年の経験と顧客との対話の中で培われた、他社が簡単に真似できない、強力で本質的な「技術力(=会社の強み)」だったのです。

しかし、そこには「見えない壁」が存在していた

その一方で、一般の消費者にとっては、ワークマンとの間に大きな「見えない壁」が存在していました。
店舗の見た目は、まさに「ザ・作業着屋」という佇まい。製品のネーミングも「〇〇親方」「現場の相棒」といったプロ向けのものが多く、店内に並ぶ商品のラインナップも、一般客が自分向けのものを見つけるのは困難でした。

つまり、すべてが「プロの職人さん向け」に最適化されており、その素晴らしい機能性が、一般の消費者には全く伝わっていなかったのです。どんなに優れた製品も、その価値が伝わらなければ、存在しないのと同じ。ワークマンは、宝の山を持ちながら、その山の入り口を固く閉ざしているような状態でした。

ターニングポイント:「作業着」を売るのをやめ、「最高の相棒」を売ることに決めた日

ワークマンの経営陣は、ある時、その宝の山である自社の揺るぎない強み=「プロが認める究極の機能性」を、全く異なる視点で見つめ直すという、コロンブスの卵的な発想の転換を行いました。

「強み」の再定義という魔法

彼らはこう考えたのです。
「この、豪雨の工事現場でも浸水しない絶対的な防水防寒性能は、真冬のバイクツーリングや、厳しい環境での釣り、雪中キャンプでも“最強の武器”になるのではないか?」 「厨房の油で滑らない、この驚異的な耐滑性能を持つ靴は、雨の日に子供を抱える妊婦さんや、レストランの厨房で働くパートの主婦にとっても“最高の安心”を提供できるのではないか?」

「価値」の、劇的なシフト

この視点の転換を経て、彼らは単なる「作業着」というモノを売ることをやめました。

*その代わりに、プロ品質の機能性がもたらす「アウトドアやスポーツ、あるいは過酷な日常を、もっと快適に、もっと楽しく過ごすための、最高の相棒」という、新しい「体験価値」を売ることに決めたのです。

製品のスペックそのものを大きく変えるのではなく、そのスペックがもたらす価値の「意味」を、顧客の視点から劇的に変えた。これこそが、ワークマンのリブランディングの核心であり、最大のターニングポイントだったのです。

DIANTの「5つの糸」で分析する、ワークマンの巧みなリブランディング戦略

このワークマンの巧みな戦略は、私たちが中小企業様のブランディングをご支援する際に用いるコアフレームワーク「5つの糸」に当てはめてみると、その構造がより明確に理解できます。

① 決して変えなかった、屋台骨としての「想いの糸(MI - Mind Identity)」

ワークマンが最も賢明だったのは、リブランディングの際に、企業の“魂”であるこの糸を一切変えなかったことです。 「現場で働くプロの職人さんを、本当に良い製品で支えたい」という、創業以来の高品質・高機能・低価格への徹底したこだわりは、一切ブレませんでした。この揺るぎない軸があったからこそ、新しい顧客層からも「あのプロが使うワークマンだから、品質は間違いない」という、絶対的な信頼を得ることができたのです。

② 大胆に、そして劇的に変えた「届け方の糸(DI - Delivery Identity)」

一方で、価値を「誰に」「どう届けるか」という戦略は、180度と言っていいほど大きく変えました。
ターゲットの劇的な転換
 顧客を「プロの職人」から、「製品の機能性を求めるすべての人」へと、一気に拡大しました。

コミュニケーションの最適化
彼らが行ったのは、大規模なテレビCMではありませんでした。

  • SNSの戦略的活用
    InstagramやYouTubeで、実際にワークマン製品を愛用するキャンパーやバイカー、主婦といったインフルエンサー(公式アンバサダー)を探し出し、彼らにユーザー目線で、その圧倒的な機能性の魅力をリアルに語ってもらったのです。
  • メディア戦略
    広告費をほとんどかけず、その驚異的なコストパフォーマンスが、テレビや雑誌、Webメディアで「勝手に」取り上げられるような、話題性の高い状況を作り出しました。

③ 新しい顧客を温かく迎え入れた「顔立ちの糸(VI - Visual Identity)」

そして、新しいお客様が安心して来店できるよう、お店の「顔立ち」も新しくしました。

 新業態である「WORKMAN Plus」や「#ワークマン女子」では、従来の店舗のイメージを覆し、ロゴデザインや店舗の内装、商品の陳列方法を、一般客がワクワクしながら入れるような、明るくクリーンなアウトドアショップやアパレルショップのような「顔立ち」へと刷新したのです。

このように、変えるべきもの(届け方、顔立ち)と、決して変えてはならないもの(想い)を明確に峻別したこと。

それこそが、ワークマンのブランディング戦略の見事さなのです。

あなたの会社の「技術力」、本当に“その業界”にしか通用しませんか?

ワークマンの目覚ましい成功物語は、私たち中小BtoB企業に、大きな勇気と希望を与えてくれます。
あなたが「これは〇〇業界向けの、ニッチで専門的な技術だ」と思い込んでいるその強みも、

ほんの少し視点を変え、見せ方(VI)や伝え方(DI)を工夫するだけで、全く新しい市場や、想像もしていなかった顧客層に熱狂的に支持される「新しい価値」に生まれ変わる可能性を、間違いなく秘めているのです。

貴社が長年培ってきた「当たり前の強み」は、一体誰にとっての、どんな「特別な価値」になり得るでしょうか?
もし、貴社の会社に眠る「当たり前の強み」を再発見し、それを新しい市場や顧客に届けるためのリブランディング戦略を、信頼できるパートナーと共に描いてみたいと感じていただけたなら、ぜひ一度、私たち株式会社DIANTにご相談ください。

私たちの伴走型ブランディングサービス『Tsumugi』は、まさに貴社の揺るぎない「想いの糸」を深く見つめ直し、未来を切り拓くための新しい「届け方の糸」を、お客様と共に紡ぎ出していくプロセスそのものです。

ブランディングデザインにご興味がございましたら、ぜひ以下のリンクもご確認ください。

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