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父の会社を継いだ僕が、『先代の想い』と『新しい時代』の狭間で“会社の本当の宝”を見つけ出すまでの物語

この記事の目次

先代から受け継いだ大切な会社。その歴史を守りたい想いと、時代に合わせて変化しなければならない現実の狭間で悩む、事業承継者の方は少なくありません。

そんな皆様が、ブランディングを通じて未来への確かな一歩を踏み出すヒントを得ていただくために、ある二代目経営者の実話に基づいた物語をご用意しました。

「先代はこうだった」― その言葉が、僕を縛り付けていた

父が一代で築き上げた、地元で長年愛されてきたこの会社。それを継いだことは、僕の誇りだった。
少なくとも、社長に就任した当初は、そう思っていた。

しかし、いつしかその誇りは、「父のようには到底できない」という焦りと、「先代が築いたやり方を変えてはいけない」という、目に見えない重圧に変わっていた。

会社は、幸いにも安定している。だが、時代の変化とともに、確実にその仕組みや考え方は古びてきている。
新しいITツールを導入しようと提案しても、新しい営業戦略を試そうとしても、長年会社を支えてきてくれた古参の社員たちから聞こえてくるのは、決まってあの言葉だった。

「先代は、こうおっしゃっていました」 

「先代の時代は、このやり方でうまくいっていたんです」

彼らの会社への忠誠心は、痛いほど分かっていた。ありがたいとさえ思っていた。しかし、その善意の言葉が、僕を過去に縛り付け、未来へ向かう一歩を、ひどく重くさせていた。

未来が見えず、過去に縛られる。そんな八方ふさがりの日々が続いていたある日の午後、僕は気分転換に、普段はあまり足を踏み入れない本社の古い倉庫の整理をしていた。

山と積まれた古い書類の奥、段ボール箱の底から、一冊の、ほこりをかぶった大学ノートが出てきた。表紙には、見慣れた父の几帳面な字が記されていた。

そのノートが、閉塞感に満ちていた僕たちの会社の未来を照らす、一筋の灯台の光になることを、この時の僕はまだ知る由もなかった。

父が遺した一冊のノート ― そこに綴られていた“会社の魂”

事務所に戻り、僕はゆっくりとノートのページをめくった。

そこには、インクの匂いが微かに残る父の字で、創業当時の記憶が、まるで昨日のことのように鮮やかに綴られていた。

創業の想いと、お客様一人ひとりへの感謝

最初の数ページは、資金繰りの苦労や、眠れない夜の不安といった、生々しい記述が続いていた。

そして、初めて大きな契約が取れた日の、子供のようにはしゃぐ父の喜びが、走り書きのような文字から伝わってきた。


僕の胸を打ったのは、その後のページだった。
そこには、お客様である会社の名前と担当者の名前が、一つひとつ丁寧に記されていた。そして、その横には、取引の中で交わされたであろう感謝の言葉が添えられていた。


「〇〇様。システム導入後、『業務が本当に楽になったよ、ありがとう』と、満面の笑みで言ってくださった。この笑顔のために、僕はこの仕事をしている」

 「△△様。トラブル対応で深夜に駆けつけた際、『こんな時間まで本当にすまないね』と温かいコーヒーを差し入れてくださった。ありがたくて、涙が出そうだった」


そこにあったのは、売上や利益の記録ではなかった。父がお客様一人ひとりからいただいた「ありがとう」という言葉と、それに対する父自身の、深い感謝の気持ちだった。

会社の「原点」との、本当の出会い

ノートの最後の方のページに、ひときわ力強い字で、こう書かれていた。

「私たちの仕事は、単にモノやシステムを売ることじゃない。私たちの技術で、この街で働く人々の暮らしを、未来を、少しでも豊かに支えたい。それこそが、私たちの存在意義だ」

まるで、頭を強く殴られたような衝撃だった。 それは、僕が今まで会社説明会やウェブサイトで語ってきた、どんな美辞麗句よりも力強く、温かい、この会社の「魂」そのものだった。

僕は、父が本当に大切にしていたものが何だったのかを、この時初めて、本当の意味で理解した。父は、会社を大きくすること以上に、「この街を支える」という誇りを、社員たちと分かち合いたかったのだ。

「変える」のではなく「取り戻す」
古参社員たちとの対話が、未来への扉を開いた

翌週、僕は古参の社員たちを中心に、役員会議室に集まってもらった。
そして、父のノートをテーブルの中央に置き、こう切り出した。

「皆さんを、ずっと困らせていたかもしれません。僕は、この会社を、今の時代に合わせて『変えよう』と、必死にもがいていました。でも、どうやら僕は間違っていたようです」

訝しげな顔をする彼らに、僕は続けた。

「僕たちが今すべきなのは、会社を無理やり変えることじゃない。父が、そして皆さんが創業当時に大切にしていたこの“想い”を、もう一度この会社に『取り戻す』ことじゃないでしょうか。そして、その大切な想いを、今の時代に合った形で、新しいお客様にも届けていくことじゃないでしょうか」

僕は、ノートに書かれていた「この街の人々の暮らしを、未来を、少しでも豊かに支えたい」という一節を読み上げた。
沈黙が流れた。

そして、一番のベテランであるAさんが、ぽつりと口を開いた。 「そういえば社長は、よくそう言っていましたな…。『俺たちは、この街のITのお医者さんなんだ』って」

それをきっかけに、堰を切ったように、他の社員たちも創業時の苦労や喜びを語り始めた。

「あの時、お客様にこう言われて嬉しかった」「先代は、利益度外視でここまでやっていた」…。

彼らが語る言葉は、もはや変化への抵抗ではなかった。それは、会社の「本当の宝(=創業以来、決して変わることのない価値観)」を、僕と一緒に再発見しようとする、心強い仲間としての言葉だった。


僕たちは、父の想いを、この会社の揺るぎない「原点」とすることに決めた。 

そして、「この原点を、今の時代に合った形でお客様に届けるには、どうすればいいか?」という一つの問いが、世代も立場も超えて、僕たちを再び一つのチームにしてくれた。過去への固執は、未来への大きな推進力に変わった瞬間だった。

“宝物”を未来への“旗”に ― 僕たちのリブランディングの全プロセス

「原点」を、新しい時代の羅針盤に

僕たちはまず、「この街の人々の暮らしを、未来を、少しでも豊かに支えたい」という父の想いを、新しい会社のミッションとして正式に再定義した。

そして、これを今後の全ての事業活動における判断基準、つまり新しい時代の「羅標盤」とすることを、全社員で共有した。

サービスとコミュニケーションの、徹底的な見直し

この羅針盤を手に、僕たちは自社のサービスやお客様との関わり方、情報発信の言葉遣いまで、「本当に暮らしを豊かに支えるとは、具体的にどういうことか?」という視点ですべてを見直した。

それは、単なる機能提供ではなく、お客様の事業に深く寄り添い、共に未来を考える「伴走者」としての役割を、より強く意識するプロセスだった。

想いを「カタチ」にするデザイン

次に、この新しい羅針盤を、社外の人にも伝わる「旗」として、力強く掲げる必要があった。

言葉だけでは、想いは伝わりきらない。

僕たちは、この最も重要なプロセスにおいて、ブランディングの専門家の力を借りることに決めた。
専門家との協働で進めたのは、ロゴやウェブサイト、会社案内といった「会社の顔」の刷新だ。


新しいデザインは、単にモダンでお洒落になっただけではない。
例えば、新しいロゴマークは、父の時代のロゴにあった「歯車」のモチーフを一部デザインに残し、これまでの歴史への敬意を示しながら、未来への広がりやお客様との繋がりを感じさせる、軽やかで温かみのあるデザインに生まれ変わった。

ウェブサイトには、古参のベテラン社員と、入社したばかりの若手社員が、笑顔で未来を語り合う対談コンテンツを大きく掲載した。それは、まさに過去と未来を繋ごうとする、僕たちの物語そのものだった。

父が遺した“想い”を、新しい時代の“旗”として掲げること

新しい旗を掲げた会社には、明らかに新しい、心地よい風が吹き始めた。


社員たちは、自社の歴史と、これから向かう未来の両方に誇りを持ち、以前にも増して活気に満ちている。

「先代はこうだった」という言葉は、今では「先代のこの想いを、今の私たちならこう実現できる」という、前向きな言葉に変わった。


そして何より、新しいウェブサイトや会社案内を見た、若い世代のお客様や、「その理念に共感しました」という熱意ある求職者が、僕たちの会社を訪ねてくれるようになったのだ。


僕は今、確信している。 事業承継者である僕の仕事は、父のやり方をただ化石のように守ることではなかった。父が遺してくれた“想い”というかけがえのない宝物を、社員みんなで見つけ出し、それを丁寧に磨き上げ、新しい時代の“旗”として高く掲げること。

それこそが、僕に託された本当の使命だったのだ。

【まとめ】物語から学ぶ、事業承継におけるブランディングの力

いかがでしたでしょうか。 

この物語は、ある二代目経営者が、先代の遺した想いと社員との対話を通じて、会社の「魂」を再発見し、それを新しい時代の力に変えていくまでを描いた、実話に基づいたストーリーです。

この物語が教えてくれるのは、事業承継における「リブランディング」とは、過去を否定し、全てを新しく作り変えることではない、ということです。むしろ、先代が大切にしてきた本質的な価値観や、会社が長年培ってきた歴史という「宝物」を深く理解し、それに敬意を払いながら、現代の顧客や社会に響く「言葉」と「デザイン」に翻訳し直していく、極めて繊細で、創造的な活動なのです。

「先代の想い」と「新しい時代」の狭間で、一人孤独に悩んでいる事業承継者の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、この物語のように、その悩みこそが、会社を次のステージへと導く、大きなチャンスの始まりとなるのです。
私たち株式会社DIANTは、まさにこの物語のような、事業承継という重要な局面におけるブランディングを、お客様と「共に創る」ことを最も得意としています。

貴社の歴史の中に眠る「宝物」を一緒に見つけ出し、それを未来への輝かしい旗印として掲げる旅路に、信頼できるパートナーとして伴走させていただければ、これほど嬉しいことはありません。ぜひ、お気軽にご相談ください。

ブランディングデザインにご興味がございましたら、ぜひ以下のリンクもご確認ください。

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