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「履歴書の空白期間」を親の仇のように嫌うのはやめませんか。春の採用基準“断捨離”で出会える、思わぬ原石

この記事の目次

クローゼットとガレージに眠る
「使わないけれど捨てられないモノ」

春。気温も上がり、週末ごとに少しずつ家の中の空気が入れ替わっていくのを感じる季節です。
重い冬物のコートをクリーニングに出すついでに、自宅のクローゼットの整理(衣替え)や、不要なものの断捨離を行う方も多いのではないでしょうか。

私も先日、休日にまとまった時間をとり、衣服の整理を行いました。
「これはもう何年も着ていないな」「体型が変わって、サイズが合わなくなったな」
「今の自分の年齢には少し若すぎるデザインかもしれない」。
そう思いながらも、「当時は高かったから」「もしかしたら、いつかまた着る機会があるかもしれないから」と、どうしても手放せずに残してしまった服がいくつかありました。
結果として、クローゼットはパンパンのまま。
これでは、爽やかな新しい春服を迎え入れるスペースがありません。

さらに、私はアウトドアが好きで、よく愛車に家族を乗せてキャンプに行くのですが、春のシーズンインに向けてガレージのキャンプギア(道具)を整理した時も同じ現象が起きました。
「設営が面倒で最近全く出番がない重厚なテント」や、「ポンピングが難しくてお蔵入りした古いバーナー」。今の我が家のキャンプスタイルには全く合っていないのに、「名作だから」「もったいないから」と、いつまでも棚の場所を占領しています。

このクローゼットやガレージの光景を眺めながら、私は企業の採用担当として、ハッと胸を突かれました。

「うちの会社の『採用基準』も、これと同じように、古いものをいつまでも握りしめていないだろうか?」と。

時代は令和になり、リモートワークの普及や人生100年時代の到来など、働き方も人々のキャリアに対する価値観も劇的に変化しています。
それなのに、私たち受け入れる側の企業は、「昔からずっと使っているから」という理由だけで、今の自社には合わなくなった「古い採用フィルター」を捨てきれずにいるのではないでしょうか。

1.「履歴書の空白期間」は本当に悪なのか?

私たちが真っ先に断捨離すべき、古びた採用基準の代表格。
それは「履歴書の空白期間(ブランク)」に対する過剰なアレルギーです。

多くの企業では、書類選考の際、履歴書の職歴欄に半年や1年の空白期間があると、それだけで「マイナス評価」を下します。
システムで自動的に弾く設定にしている会社や、面接官が履歴書を見た瞬間に顔を曇らせ、機械的に不採用のハンコを押すケースも珍しくありません。

「この1年間、一体何をしていたんだ?」
「働く意欲が決定的に欠けているのではないか?」
「ストレス耐性が低くて逃げ出したのではないか?」
「よっぽど能力が低くて、どこにも受からなかったのでは?」

まるで親の仇でも見つけたかのように、ネガティブな推測のオンパレードです。
しかし、ここで少し立ち止まって、冷静に考えてみてください。
レールから一度も降りずに、定年まで猛スピードで走り続けることだけが、本当に「正しいキャリアのあり方」なのでしょうか。

現代の空白期間には、様々な背景があります。

激務で心身のバランスを崩し、自分を取り戻すための休養・充電期間。

語学留学やプログラミングなど、新しいスキルを身につけるためのリスキリング期間。

家族の急な介護や、パートナーの転勤に伴う離職、子育てに専念するための時間。

あるいは、ただ純粋に「自分が本当にやりたいこと、これからの人生を見つめ直すため」のモラトリアム。

これらを一律に「ブランク=悪」「ブランク=無能」と切り捨てるのは、あまりにも短絡的であり、企業にとっても貴重な出会いを自らドブに捨てるような、もったいない行為です。

2.「空白」ではなく「プロセス」を見る面接の極意

私は採用において、目に見える「結果(学歴や職歴の綺麗さ)」だけでなく、その裏にある「過程(プロセス)」を何よりも大切にしたいと考えています。

履歴書の空白期間は、決してただの「無」や「停止」ではありません。
そこには必ず、その人が壁にぶつかり、悩み、立ち止まる決断をし、何かを経験したという「プロセス」が存在しています。
私たちが面接で真に確認すべきは、空白の期間の長さではなく、「その期間に何を考え、自分とどう向き合い、何を得たのか」という内省の深さです。

面接の場では、「なぜ休んだの? 理由を説明して」と取り調べるように詰問するのではなく「この期間、ご自身にとってどんな気づきがありましたか?」「立ち止まったことで、仕事に対する価値観に変化はありましたか?」と、温かいトーンで丁寧に問いかけてみてください。

「一度完全に立ち止まって自分を見つめ直したことで、自分が本当に大切にしたいのは『誰と働くか』という価値観だと気づけました」
「独学で新しい分野の資格勉強をしていました。結果的に資格取得には至りませんでしたが、毎日計画を立ててコツコツと物事を進める力が身についたと実感しています」

こうした言葉の裏には、一度挫折を味わい、それを自分の力で乗り越えたという「精神的な強靭さ(レジリエンス)」や、他責にせず自ら軌道修正できる「自己管理能力」が隠れていることが多々あります。

むしろ、会社の看板に寄りかかり、流されるままに何となく働き続けてきた人よりも、一度立ち止まって深く思考し、自分の足で再び歩き出そうとしている人の方が、組織に新しい視点をもたらし、結果的に困難な局面でも逃げずに長く定着してくれる「思わぬ原石」である可能性が高いのです。

3.「転職回数」や「業界未経験」というフィルターも捨てる

空白期間のアレルギーを手放せたら、次はクローゼットの奥にある別の古い服も一緒に断捨離してしまいましょう。
それは、「転職回数が多い人はNG」「同業種経験3年以上必須」といったフィルターです。

「石の上にも三年」という言葉は美しいですが、変化の激しい現代において、合わない環境で3年間耐え忍ぶことが必ずしも美徳とは言えません。
転職回数が多い人に対して「うちに入ってもすぐ辞めるに違いない」と決めつける前に、「なぜそれほど環境を変えてきたのか」というプロセスに目を向けるべきです。

実は彼らは、「様々な組織の文化ややり方を肌で知っている」「新しい環境への適応能力が異常に高い」という、強力な武器を持っている人材かもしれません。

また、「即戦力が欲しいから、同業種の経験者のみ」という縛りも、時として組織の首を絞めます。
同業種の経験者は、確かにすぐに業務をこなせるかもしれません。
しかし、業界の常識に染まりきっているため、「なぜこんな非効率なことをやっているんですか?」という素朴な疑問を持つことができず、イノベーションが生まれにくくなります。

全くの異業種から来た「未経験者」は、業界の常識にとらわれない独自の視点を持っています。
彼らがこれまでのキャリアで培ってきたポータブルスキル(課題解決力やコミュニケーション能力など)と、自社の業務が掛け算された時、これまでにない新しい価値が生まれるのです。

4. 完璧な履歴書を求める「リスク回避」の罠

では、なぜ私たち採用担当者は、空白期間や転職回数の多さを極端に嫌い、ピカピカの履歴書ばかりを求めてしまうのでしょうか。

かく言う私も、性格的には非常に「慎重」なタイプなので、その気持ちは痛いほどわかります。
その根本にあるのは、採用担当者自身が陥っている「失敗したくない(社内で怒られたくない)」というリスク回避、自己保身の心理です。

「有名大学を出ていて、大企業出身で、ブランクが一切ないピカピカの経歴の人を採用して、もし現場で全然使えなかったとしても、『経歴は完璧だったのに、本人のポテンシャルの問題ですね』と、言い訳ができる。
でも、空白期間があったり、転職回数が多い少し傷のある経歴の人を採用して、もしすぐ辞めてしまったら、現場から『なぜ人事部にあんな変なヤツを採ったんだ! お前の見る目がないからだ!』と、自分の責任として責められる」

・・・いかがでしょうか。無意識のうちに、こうした保身の感情が働いていないでしょうか。
もし、あなたが「会社のため」ではなく「自分の責任を回避するため」に古いフィルターを使っているなら、今すぐそのフィルターをゴミ袋に捨ててください。

私たちが探しているのは、履歴書という書類が綺麗な人ではありません。
自社の理念やカルチャーに深く共感し、泥臭い過程も楽しみながら、「一緒に会社を作り上げてくれる、血の通った仲間」のはずです。
書類の綺麗さだけで仲間を選んでいては、本当に強い組織は作れません。

履歴書の余白は、未来の可能性

クローゼットに新しい春の風を入れ、今の自分に本当に似合う服を迎え入れるためには、まず過去の執着を捨て、古い服を手放して「物理的な余白」を作らなければなりません。

採用活動も、これと同じです。
「空白期間はNG」「転職は3回まで」「同業種経験必須」。
そんなガチガチに固まって古びた基準を思い切って断捨離し、採用の入り口に「余白」を作ることで、これまでフィルターに弾かれて見えていなかった、全く新しい才能や魅力的な人材に出会えるようになります。

そして、これは採用だけでなく、受け入れる組織の姿勢にも言えることです。
完璧なマニュアルや制度を用意して「さあ、この通りに働きなさい」と管理するのではなく、「うちの会社はまだまだ未完成です。だから、あなたの力で一緒にこの会社を良くしていきたいんです」と、組織としての「余白」を見せること。
それが、入社した人の当事者意識を生み、結果として離職率を下げる最高の特効薬になります。

履歴書の余白(ブランク)を恐れないでください。
その余白の期間にこそ、その人の人間らしさ、挫折を乗り越えた強さ、そして自社で花開くかもしれない未来の可能性がぎっしりと詰まっています。

さあ、今年の春は、採用基準のクローゼットをすっきりと整理してみませんか。
古いフィルターを捨てたその先に、自社を照らす「本物の原石」との思わぬ出会いが、きっと待っているはずです。

いかがでしたか。
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